Interview: Magical Mistakes
Magical Mistakesとして活動するErik Luebsは最近急がしそう。アメリカにツアーに行ったり、Day Tripper Recordsからアルバムをリリースしたり、大阪のイベント、INNITに関わったり。今週の土曜日にはイギリスのプロデューサーClarkとLapalux、そしてアメリカのプロデューサーTraxmanと、なんばHatchで共演します。そんな彼にバイオリニストJake Falbyについてや、新作、”Everything Uncertain”のレコーディングについて聞いてきました。 MBM: 夏のアメリカツアーはいかがでしたか? Erik Luebs: 凄く良い時間を過ごせましたし、充実していました。合計で11日も演奏する事ができましたしね。ロサンゼルスのThe Smellでのライブは特に良くて。あとはなんと言ってもサンディエゴ。サンディエゴでは今の大阪に近い事が起きていましたし、出演者も以前に関わらせて頂いた方々でした。INNITマガジンでRemixをお願いさせて頂いてて。彼等はKill Quantiというクルーで、面白いショーをやっています。とても心の広い人達で、僕のやってる事にも興味を持ってくれて、まるで実家にいるような気分でした。最近仲良くしているMatthewdavidも演奏してましたね。 彼とはロサンゼルスでも共演しました。The Smellは若い頃、DIYやパンク、そしてノイズ等に興味があった頃によく通っていたので、今僕がやっているような、ベニューの伝統とはかけ離れた音楽を演奏するのは何か変な感じがしましたね。まぁ、理解のある方々がやってる自由な場所ですし、長い事会ってない友達にも会う事ができました。 MBM: Matthewdavidとはどのように出会ったのですか? EL: 僕がアメリカツアーを組んでいた、Yoshitake Expeという日本のギタリストのライブで出会いました。もう三年も前になりますね。その頃Matthewdavidはサポート・ミュージシャンだったのですが、それ以来メールなんかで連絡を取っていました。Seihoに、アルバム、Everything UncertainのマスタリングをMatthewdavidに任せる事を進められて、六月頃に連絡を取りましたね。忙しいだろうと思っていたのですが、彼は興味を持ってくれて、リミックスなんかもやってくれました。 MBM: “Everything Uncertain”のレコーディングは順調でしたか?他のアルバムのレコーディングとはどのような違いがありましたか? EL: 曲のアイディアが出てきたのは去年の冬に”Special Friends“っていう自主制作EPをリリースした後ですね。その作品は、僕のユニークさを他のクリエイティブなアーティスト達と共に発展させていこう、という試みでした。新作ではヒップホップとかのビートミュージックを避けています。意図的なのか偶然なのかは自分でも良く分かりませんが、ポスト・ロックとかポップ・ミュージックは常に好きだったので。例えば、“Don’t Need Much”なんかは凄くポップですよね。 最近では70年代のスピリチュアル・ジャズをよく聴いています。ファラオ・サンダース、ジョン・コルトレーン、彼とアリス・コルトレーン、あとマイルス・デイビスなんかも。でも、アルバムのレコーディングにはあまり影響してないかもしれませんね。そういったレコードを聴いていた時に、音色なんかからは刺激を受けました。古いキーボードやオルガンの音で実験する意欲を与えてくれています。 MBM: レコーディングはどこで行われたのですか? EL: 7〜8割は宮崎の山奥で制作しました。エディティングやミキシングのほとんどはここ、滋賀です。こっちに引っ越してきてから細かい作業をしたのですが、完成させるのにものすごく時間がかかりましたね。 MBM: 宮崎という環境はアルバムにどのような影響を与えましたか? EL: 大自然の中で制作した事が 哲学的に”Special Friends” EPに大きな影響を与えているのは確かです。新作ではどっちかというと音楽的な挑戦ですね。特定の場所だけでなく、いろんな環境の影響を受けています。前作はゆったりとした、メディテーションのような雰囲気を持っていて、音楽性というよりは、哲学性を重点に置いていました。新作はEPでなくアルバムなので、聴き手が何カ所くらい訪れる事ができるのか、興味があります。 でも、この作品は哲学的でもないですし、山の頂点にいるような内容でもありません。思い入れがあるのが最後の曲です。もうかれこれ3〜4年前からあった曲なので、聴いたときには出来の良さに思わず自分で驚いてしまいました。 MBM: “Everything Uncertain”には日本語のアナウンスメントのようなサンプルや、“Metemorphosis”での幼虫について解説するサンプルが使われていますが、解説をお願い致します。 EL: あれは昔住んでいた村で流れていた公共アナウンスです。避難情報とかが主な内容で、崖崩れの時なんかには放送されていましたね。大半が、「健康には気をつけて」みたいなありふれた内容だったので、録音してみたら面白くて。彼女が喋る時に放つムードを、メランコリックなメロディーやコードで味付けしています。それをする事で、曲を聴いて感じる事や見える物が変わってきて、意味深にできるのが利点です。矛盾してるように聞こえるかもしれませんが、何らかの効果があるので、彼女の声が必要となるのです。 他には、幼虫が蝶になる瞬間を解説するサンプルも使っているのですが、これはもっと教訓的と言えるでしょう。我々の生き物としての意識を問うような物なので、面白いアイディアだと思っています。 あと、808のバスドラムを除けば他にサンプルは使っていません。全部自分で作ろうと意識しています。 MBM: 自然との関わり方を教えて下さい。 EL: 僕は、音楽を通して音楽が存在する為のキャンバスを作ろうとしています。そのキャンバスでは音楽を実体的に聴き、感じ、触れ、見る事もできます。パレットには、紙や植物等のオーガニックな物を選んでいます。僕の部屋の音も。水も。“With Love”という曲なんかでは、焼酎の箱をパーカッションとして使っています。厳しいルールは無く、自由にやっています。…