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Category Archives: Music @ja

New Give Me Wallets: “Look After You”

数年前に東京のGive Me Walletsを初めて聴いた時、踊る為の音楽というよりは、じっくり聞き込みたい、マスロック的な音楽だと感じました。マイスペースにあげられていた曲はフォールズを彷彿とさせ、好みではあったものの、ダンスフロアには適さないような気がしていました。

なので、Give Me Walletsにはよりダンサブルに、そしてエモーショナルになってくれるように期待していました。彼らの新曲、”Look After You”は、80年代風シンセやビートで彩られ、まるで当時の曲のようでした。

また、”Look After You”のボーカルは、歌詞は聞き取りにくいものの、The Brixton Academyのように、感情的かつ情熱的でした。”Look After You”を含む、SoundCloudにあげられているGive Me Walletsの新曲は、バンドが良い方向性を見つけた事を証明しています。視聴は以下から。

Post Modern Team And Twangy Twangy Team Up For EP, Where The Action Is

このEPは日本インディー・ポップ界のとても強力なタッグから生まれています。”Heartbreak”や”Never Let You Down”等、2012年度最高峰ともいえる曲をリリースした大阪のPost Modern Teamと、元Candy EyesのDai OgasawaraによるTwangy Twangyが、Canata Records(BOYISH, Elfs In Bloom)からスプリット・EPをリリースしました。

Post Modern Teamの”She Does Something To Me”では、彼らの普段のスタイルから離れ、新しい手法を模索しているようです。Sloppy Joeに近いテイストを感じます。ザ・スミスやザ・キュアー等のインディー・ポップとも比較されそうですが、曲を通して細かいディテールが詰め込まれていますし、コーラスも決してアンセムのような物ではありません。

Twangy Twangyの曲は電子楽器とアコースティック・ギターで構築されています。つぶやくようなボーカルにもう少しヴォリュームが必要かな、とは感じますが、とても美しい曲で、暑い八月中旬にはもってこいでしょう。ダウンロードはこちらから。また、視聴は以下から。

Sound Of The City: YYSHIDD

シティ・ポップスは、日本経済がピークを迎えたバブルの頃に盛り上がったジャンルですが、数年前から復活の兆しを見せています。ジャパンタイムズでこの流行について取り上げられています。Things That Fadeをリリースしたデュオ、Greeen Linezを中心として書かれてるのですが、彼等の音はまるで銀座のホテルでくつろいでいるような気分にさせてくれます。最近注目している他のシティ・ポップスアーティストといえば海老名のYYSHIDDです。SoundCloudのプロフィールには、“Japanese composer/student” (日本の作曲家/学生)と紹介されています。彼の“Naomi’s Love Affair”という曲では、シティ・ポップスの醍醐味が全て取り入れられています。シンセやベース、そしてトロピカルな雰囲気を持つパーカッションが、仕事の後のリラックスタイムのような空気感を表現しています。夏の暑さを和らげてくれるようなスムーズなボーカルも印象的です。

だからといってYYSHIDDはシティ・ポップスに留まろうとしている訳ではありません。Greeen Linezのように、他のジャンルからの影響も積極的に取り入れられています。例えば、“Potato”では涼しく心地良い楽曲の上にラップがサンプルされています。視聴は以下から。

J-Chopped: Terio Chops And Screw Kyary Pamyu Pamyu

きゃりーぱみゅぱみゅは今のところ2012年度で最もユニークなJ-Popアーティストと言えるでしょう。何が興味深いかというと、楽しいミュージックビデオと、中田ヤスタカのプロデュースによるデビューアルバム、”ぱみゅぱみゅレボリューション”がアメリカのiTunesのelectronicチャートで一位に輝いているという事です。

彼女は海外のアーティスト達にも影響を与えています。シカゴのジュークプロデューサーK. Locke Traxxは、彼女のヒット曲、”Ponponpon“を素晴らしいフットワークの曲として仕上げました。そして近日、東京を拠点として活動するTerio Beatsは彼女の曲にチョップド&スクリュードの手法を使い、”The Pamyu Pamyu Tape“というプロジェクトとして発表しています。

Terio Beatsが何故このプロジェクトを手がけたかは謎ですね。おそらく、普段楽しくポップな印象の強いJ-Popを不気味でトリッピーな物にする実験、と捉えて良いでしょう。でも、全ての曲がそうという訳ではなく、原曲のテンポのままの、チョップされたのみのトラックもあります。
“Liquid Cocaine”はPonponponを遅くし、”Liquid Cocaine Remix”はPonponponを更に遅くしています。更に、彼は”つけまつける”をチョップし、とても不安定なビートにしています。いくつかの優れたトラックでは、あえてきゃりーぱみゅぱみゅのボーカルが除かれており、代わりに、彼女の曲の中から特定の音を使い、上にラップを乗せれるような美しいビートにを表現しています。”Lake Onterio”では”チェリーボンボン”のシンセを落ち着いた印象に。”Japan”は”Candy Candy”のイントロにシンプルなビートを加えたのみのトラックなのですが、特に聴きやすく優れたトラックと言えるでしょう。

このテープの一番注目すべき点は、J-Popとチョップド&スクリュードがコラボレーションしたという所。驚く事に、YouTubeでは宇多田ヒカルのチョップド&スクリュードミックスが多く出回っています。しかしそれを除く他のJ-Popアーティストは海外のアーティスト達に比べあまりこのような使い方をされていません。これは日本では著作権が厳しいからかもしれません。でも、カリフォルニア州オークランドで活動するFriendzoneはPerfumeのトラックをサンプリングし、2011年度で最も優れたラップビートの一つに乗せられています。

確かにJ-Popのアーティスト達は頻繁に実験的に使われているとは思いますが、ここで取り上げたアーティスト達は異なった実験方法をしていると言えるでしょう。”The Pamyu Pamyu Tape”はこちらからダウンロード可能です。

New And Vice Versa: “Its Me”

大阪を拠点とするAnd Vice Versaのアルバム、”E. Tender”は4月に発表されていましたが、まだそれについて書けていませんでした。しかし聴き続ける事で、今では私の2012年度のベストアルバムの一つになりました。

And Vice Versaは単音を好むアーティストだと感じます。そして”E. Tender”で使われているノイズはまるで触る事のできるような質感を持っています。

And Vice Versaの新曲、”Its Me”は、E. Tenderには含まれていないものの、そのスタイルはとても似ています。アルバムでも使われていた素晴らしい音が多く使われていて、その特徴的なシンセや、エフェクトが加えられたボーカルは何重にも重ねられ、幻想的なレイヤーを生み出しています。更に、And Vice Versaは曲中に、見つけたら嬉しくなる、細かい工夫を多く盛り込んでいます。”Its Me”とアルバムの曲の違いと言えば長さでしょう。アルバムの曲は3分程なのに比べ、この曲は6分半近くあります。でも、この曲は一瞬たりとも興味を離さないよう、上手く工夫されています。