Music

  • JAM The MOD: “Since Tomorrow”

    インディ・ポップ・レーベルAno(t)raksが2月に新しいコンピレーション・アルバムをリリースします。既にいくつかの参加アーティストが発表されていて、このコンピが本当に素晴らしい物になると期待させてくれます。Post Modern Team、BoyishやThe Paellas等、お馴染みのアーティスト達に加え、JAM The MODという福岡のバンド等、新しい名前もいくつか。跳ねるギターやため息をつきたくなる歌詞からなる典型的な日本のインディ・ポップを想像していませんか?…とは言うものの、恥ずかしながら私も同じでした。そんな雰囲気を仮定しながら再生ボタンをクリックしたのはここだけの話。 今の所このグループはSoundCloudで”Since Tomorrow”だけしかリリースしていないのですが、これが凄く個性的。フォーキーなインディ・ポップが2007年あたりのダブステップ・リズムに乗っかってる独特なスタイルなんです。なんと言ってもこのビート感が他のTweeなアーティスト達との違いで、暖かく優しいメロディーが特徴的な曲に冷たい緊迫感を与えています。ただ単にジャンルをくっ付けるのは誰にだってできる事。でもJAM The MODは上手く異なる要素を組み合わせる事に成功していて、だからこそ注目すべきなのです。日本のインディ・ポップ・アーティスト達にとっても良いヒントになるのでは?JAM The MODのこれからが気になります…はたしてコンピにはどんな曲を提供するのか…いずれにせよ、これからもどんどん新しい事にチャレンジして欲しいです。試聴は以下から。

  • Pitch Shifted: Winona Hyper’s “Promise”

    この曲は日本のインディペンデント音楽としては決して珍しいものではないでしょう。TaquwamiやSeihoのような素晴らしいアーティスト達を皮切りに、ヴォーカルのサンプルをピッチシフトするプロデューサーは2012年に多く存在し、活躍していましたから。でもWinona Hyperの”Promise”に至っては別件として捉えてほしいです。ヴォーカルのサンプリングを決して多くは使わずに、抜けが良く、かつ曇った音世界を表現しています。この”Promise”で最も特徴的なのは遅められたり速められたりするボーカルサンプルだというのは否定出来ませんが、本当に大事なのはそれ以外で何が起こっているか。Winona Hyperが奏でる美しいシンセはTaquwamiのBlurrywonder EPを彷彿とさせつつも、このグループが足す独特な輝かしさを持つ音が、この曲を愛すべき心地の良い曲にしています。このような作曲法もまだまだ追求すべき点が多いと認識させてくれました。試聴は以下から。

  • Neon Cloud Remixes Blue Foundation’s “Describe,” We Are Mostly Pumped Neon Cloud Are Back

    Neon Cloud Neon Cloud Neon Cloud Neon Cloud!取り乱してすいません…でも、ミステリアスかつ素晴らしい(どんどん良くなっています)東京のプロジェクト、Neon Cloudが、2011年のKnit EP以降ついにまた作品をドロップしました。厳密に言うとオリジナル作品ではないのですが、Neon CloudがブルックリンのBlue Foundationの”Describe”(原曲も素晴らしいですよ!)にFlauアーティスト特有のテイストを足しています。このリミックスではリズムには手が加えられていないものの、不意なビートであったり、多数のシンセであったり、加えられた音が原曲の持つ不穏さを際立てるだけでなく、更にその世界感を追求しています。この“Describe”のクライマックスはNeon CloudがBlue Foundationのヴォーカルを逆再生し、リミクサー自身のボーカルが陰から現れる所。男性ヴォーカルがメインなものの、Cloudの繊細な女性ヴォーカルもバックグラウンドに花を添えます。今年はNeon Cloudが新作をリリースするように皆で祈りましょう!試聴は以下から。

  • Pleasant Surprises: Lil’ Yukichi’s Ghetto Pop Idol

    私はちょっとした理由からJ-Popのリミックスにはあまり興味を持てません。というのも、本来のJ-Popのままで十分なのでリミックスは必要ないからです。あと、J-Popがジャンルとして劣っていると示唆していたり、それを直接的に伝えていたりするから、というのもありますね。中にはチョップド&スクリュードやテクノ・リミックスやらなんやらをしないと楽しめない音楽だと思ってる人もいるのでは? でも最近Ghetto Pop Idol を聴いた時は驚きました。この5曲入りの作品ではLil’諭吉というアーティストが、有名なJ-Popの曲をヒップホップ・ビートで奏でています。嬉しい事に、私の好きなきゃりーぱみゅぱみゅとPerfumeが使われています。これにはついつい惹かれてしまいました。ただ、それだけじゃないんですよ!きゃりーのキラキラしたトラック”ぎりぎりセーフ”も、Lil’諭吉が切り刻んで手を加えれば幻想的なビートに一新。他のプロデューサー達が単にテンポを遅くして満足しているのとは訳が違い、原曲の良さを残したまま新しいものを作り上げています。彼がリミックスした“Plastic Smile”も個性的。Perfumeのボーカルを1秒程の長さにカットして、それを上に重ねたり、連続させたり。更なる目玉はAira Mitsukiの”ニーハイガール”のリミックスなのですが、オリジナルに使われている多すぎる電子音を強調してみたり、逆にメローにしてみたりして、曲の中に強弱を付け、上手く展開させています。これがJ-Popの本当のリミックスの仕方です。試聴はこちらから。

  • New Shortcake Collage Tape: Spirited Summer

    ヴェイパーウェイヴは(かつては?)インターネットを通して普及したジャンルで、こんな楽しい記事がありますので良かったらご覧下さい…Accelerationists! Trash music! Capitalism!みたいな…でも実際にヴェイパーウェイヴがどんな音楽なのかはややこしいですよね。たとえ結論が出たとしても、また「あれっ?」ってなりそう。私が思うヴェイパーウェイヴとは古くさい日本のコマーシャルとか企業ビデオとかをサンプリングした音楽で…楽曲自体はあまり良くない物が多いように感じます。そのコマーシャルとかのボーカルを少し歪ませたりして…こんな感じのを。この手法からは良い音楽も生み出されていますが、その反面に駄作が多いのも事実です。 東京のShortcake Collage Tapeはそんなヴェイパーウェイヴに近い音楽をやっていましたが、初のフルレングスSpirited Summerではそんな手法からは少し離れていて…というよりは単純にサンプリングを上手く使った完成度の高い作品になっています。例えば“Meet Me In Your Dreams”では昨夏YouTubeでよく観るハメになったあのコマーシャルをネタにしていて(あの広告に嫌な思いでがあっても今となっては面白く聴こえるはず)、他の曲でもコマーシャルやアニメのサンプルが曲自体を殺す事なく、上手く新しさを生み出しています。Shortcakeのベストトラックはやっぱり“Polaroid Full Of Kisses”で、ぼんやりとした記憶をさまよっていると曲の後半ではアニメのサンプルが。タイトルが示唆する通りこのSpirited Summerは暖かい季節の思い出への執着心から生み出されていて、“Summer School”や“Waiting In The Afterlife”なんかでは彼自身が“is ideal for midsummer chillouts”と説明する通り、日差しの強い日々を淡く表現しています。が、もう過ぎ去ったチルアウトみたいな感じも。最も夏っぽい“Empire Beach”と“Painted Ocean”ではシンセとホーンのサンプルが海岸を連想させます。重要なのはビートがしっかりと曲を進めて行くという点。Spirited Summerは単にノスタルジックな気分を表現しているだけでなく、サンプルを見せつけるだけでもなく、しっかりと音楽を通して感情が表現されています。2013年に入ってから初の傑作と感じています(もう2週間目に突入してしまいましたね…早い早い…)。無料ダウンロードはこちらから。